第54回 臨床心臓電気生理研究会の開催にあたって
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 2024年度臨床電気生理研究会の当番幹事を仰せつかり、大変光栄に存じます。私を御推挙いただきました幹事の先生方や会員の方々に衷心より御礼申し上げます。

 私が本会に参加させていただきました当時は、心内に3本の電極カテーテル(4極)を挿入して得られた所見から不整脈機序を推定するという時代でありまして、その仮説が正しいか否かを証明する手段はありませんでした。その後、バスケットカテーテルのような多極電極を用いたマッピング方法で不整脈回路を推量する時代を経て、現時点では三次元マッピング器材を駆使して不整脈機序を、より多くの人が納得する結果で解明できるようになり、さらにはその仮説の真偽を検証できるアブレーション治療法が確立しました。しかしながら、そのようなハイテク技術を駆使しても、すべての不整脈機序を全自動的に解明することは未だできず、最終的には人間の判断で適切に編集することで正しい解明結果を導き出すことが必要なのは依然変わりません。近年、巷ではChatGPTが知的活動の重要な部位を代替わりすることも社会問題化しておりますが、いかにAI技術が進歩してもEPの世界におきましては、複雑な不整脈機序の正確な解明には未だ不十分であり、経験ある専門医の介入が必須条件であり続けるのではないかと、甚だ私見ではありますが、そのようにEP界の近未来を期待しております。

 多くの先達の残した貴重な古典的EP理論を礎に、近来のハイテクデバイスを駆使して、最終的には優秀な人類の手によって、正確かつ確実な不整脈医療行為が行われることを願ってやみません。

 そのような意味で、本研究会の担う使命は重要であろうと確信いたします。多くの若手専門医が本研究会で発表し議論を重ねることにより研鑽を積んでいき、本邦のEPレベルの更なる向上ならんことを心より祈念いたします。したがいまして、本研究会の意義をより高めるためにも、より多くの施設からの応募を期待して止みません。

 今回は11名の選考委員の先生方に、応募者およびその所属施設を明らかにせずに厳正に審査いただき上位得点順に採択する予定であります。そのうち、上位6演題が優秀演題に選出され本会の6名の審査員により最優秀演題が決定されます。

 より多くの方にご参加いただき、本年も実りある会にならんことを心より願います。

 今回は、幹事の先生をはじめ、多くの先生方から開催地を小倉でお認めいただきました。北九州市は不肖私が生まれ育ちました故郷であります。古くは森鴎外が陸軍医官として赴任した際「小倉日記」なるものを認めましたし、また松本清張が育ち生活した地でもあります。さらには岩下俊作著「無法松の一生」の舞台でもあります。昭和期では八幡製鉄を中心とした「鉄の都」として発展いたしましたが、現在では“鉄冷え”となりまして斜陽気味です。それでもTOTO本社や、産業ロボット企業として世界トップクラスの安川電機本社、地図やナビゲーションで有名なゼンリン本社などの産業も今だ盛んであります。北九州工業地帯ですので決して空気が清らかではありませんが、海流の激しい玄界灘(壇ノ浦の源平合戦場)で揉まれた身の締まった新鮮な魚をお楽しみいただけると思料いたします。

 2024年6月8日に皆様と小倉にてお会いできることを楽しみにしております。以上、何卒宜しくお願い申し上げます。

横浜みなと心臓クリニック
昭和大学江東豊洲病院循環器科
沖重 薫