臨床心臓電気生理研究会(臨電研)は1977年(昭和52年)に、比江嶋一昌先生(東京医科歯科大学、以下当時の所属先)を中心に早川弘一先生(日本医科大学)、松尾博先生(東京大学)、外畑巖先生(名古屋大学医学部付属病院中央検査部)、外山淳治先生(名古屋大学環境医学研究所)の五人の先生が発起人となり設立された研究会です。設立後40年以上も伝統が引き継がれている研究会でありますので、当時の国内外の時代背景を含めて本誌40回記念増刊号上の比江嶋先生の寄稿文を参考にして振り返ってみます。

 1968年に経カテーテル的にヒトのHis束電位が米国Scherlag先生らにより記録されたことにはじまり、1971年には欧州Wellensらによってプログラム刺激法を組み合わせての臨床電気生理学検査(EPS)が提唱され、世界的に房室ブロック、上室頻拍の解析など不整脈の診断・治療が循環器領域のなかで新たな胎動をはじめた時代です。本邦でも1971年に比江嶋先生、松尾先生らが相次いでHis束電位記録に成功し、その後His束心電図に関する発表が学会・研究会になされてきた中、全国の研究者が臨床例・研究成果を持ち寄り、一同に会して発表・討議に十分な時間をかけながら学んでいこうという機運が高まった訳です。研究会発足時には、循環器学界重鎮の7名の教授が顧問に就任され、仙台市立病院・東京女子医大・東京医大・東医歯大難研・富山医科薬科大・京都大学・京都市立病院・長崎大・熊本大・鹿児島大の10人の先生方を募って、ここに日本全国から有志が集い記念すべき第一回研究会が開催されました。15施設から早期興奮症候群5題、上室頻拍4題、徐脈4題、薬物1題が発表されていますが、演題タイトルからはいずれも精緻で洗練されており、EPS専門家が集った本研究会らしさすでに感じられるものです。以来、年に1回(1983年までは年に2回)開催され、この間参加者は1981年には100名、2001年には300名を越え、2020年第50回大会は会場の130名に加えてWEB視聴320名とハイブリッド開催でしたがコロナ禍の厳しい世情のなか、合計460名参加と盛会であり本研究会への関心の高さがうかがいしれます。

 本会の特徴は、幹事が推薦・審査により決定される、演題は幹事施設のみ応募可能である、研究会は1日1会場で開催される、応募演題から上位約30演題が発表演題として採択される(採択率42−57%;この5年間)、発表演題と会場の質疑応答は会誌に掲載されることなどがあります。採択率が低く競争率が高いことより、発表演題はその時代の大きなトレンドを反映する中、従来にない新しい知見、視点を含む優れたものになり、一方発表内容については質疑応答時に一同に介したEPS専門家の評価・批評をオンタイムで受けるという緊張感漂う雰囲気のなかで行われるスタイルが続いています。その結果として、本研究会が世界基準で見てもレベルの高い不整脈領域研究成果を出し、明日の不整脈治療の方向性を示し、多くの優秀な不整脈研究者を輩出することに大きな役割を果たしてきました。

 今後も伝統を守り引き継ぎながら、たえず更新されていくEPSの最新の知見・研究の発信の場として、またわが国の臨床不整脈学の核として本研究会が発展するよう努力させていただく所存です。

臨床心臓電気生理研究会
代表幹事 平尾見三