第59回日本臨床生理学会総会

会長挨拶

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この度、第59回日本臨床生理学会をお世話させていただくことになりました。
会期は2022年10月21日~22日の2日間の予定で、1日目は東京のコングレスクエア日本橋を会場としてハイブリット形式での開催、2日目は完全WEB形式での開催とさせていただきます。

本会は昭和45年に開催された第1回脈波研究会を原点として、昭和56年に日本臨床生理学会として発足した非常に歴史のある学会です。学会では「臨床医学の全ての領域をめぐる学際的研究ならびに各種疾患の病態生理学的研究を介して、疾患の成因、機序、病態、治療、予防の解明を図り、併せて医学の進展に帰与する」ことを目的とし、臨床医に必要な幅広い生理学を網羅した学びの機会を提供することを目指しています。
関連分野は、循環器内科学、呼吸器病学、消化器病学、神経内科学、内分泌学、心臓血管外科学、脳神経外科学、産婦人科学、臨床検査学、病態生理学、臨床薬理学、分子生理学、医用電子工学と多岐にわたります。
2021年は山田純生会長(名古屋大学大学院医学系研究科総合保健学教授)が「生活習慣病の最新生理学」を大会テーマとしweb開催されました。腫瘍循環器リハビリテーション、心不全フレイル研究、肥満と健康障害、腸内細菌と疾患の関り、呼気ガスを用いたNO分析、非アルコール性脂肪肝など、臨床生理の幅広いテーマにおける診断法や治療法がとりあげられ、実り多き大会となりました。

本大会では、「健康寿命の延伸における臨床医学の役割」と題し、健康日本21で基本方針とされている“生活習慣病の発症予防”“疾病重症化予防”“介護予防・フレイル対策・認知症予防”に注目します。会長特別企画講演では、前理事長の三宅良彦先生より「日本臨床生理学会~温故知新~(仮)」と題してご講演を賜ります。三宅先生は2012年より理事長の労をお勤めになられ、2021年11月に現理事長の坂本長逸先生へ引き継がれました。10年間近くの長きにわたり臨床生理学の変貌を見つめ続けてこられた三宅先生のご経験を拝聴できる貴重な機会になると考えます。

シンポジウムでは、近年注目されている「放射線体外照射による新しい不整脈治療」をご紹介します。心室頻拍の治療は、現在のところ薬剤、カテーテルアブレーション、植込み型除細動器の3つが主体ですが、これらを組み合わせて治療を行っても難渋することのある重篤な疾患です。あるいはいくつかの理由でこうした治療を全て受けられないことも少なくありません。体外放射線治療は、心室頻拍に対する第4の選択肢として期待されます。これまでの放射線治療の適応は、ほぼ腫瘍疾患に限られていましたが、不整脈といった全く異なる疾患領域への治療応用は極めて革新的と考えています。

2019年来のCOVID-19感染症は流行と減少の波を繰り返しながら、いまだ収束とは言えない状況にあります。医療現場の皆様方におかれましては、従来疾患の治療に加え、発熱患者さんの対応、救急疾患対応、COVIDワクチンの予防接種、さらには地域の患者さんの健康維持という様々な社会的使命を果たすべく、尽力されていると存じます。

そのような環境下でわれわれの学術大会への参加様式は実に大きく変化しました。以前のように学会場に直接足を運び「集う」ことの自由は制限されています。オンラインはノンバーバルコミュニケーションを体感しにくいという欠点があり、発表者の息遣いや、会場の熱気を肌で感じることができません。「学びの楽しさ」が恋しく感じることもしばしばです。いっぽうでオンラインによる効率性の高さと、どこでも誰でも最新の知見を自由に聴講できるといった平等性は極めて重要なポイントでしょう。

本会は医師・研究者のみならず、メディカルプロフェッショナルの皆様にも多く参加していただきたいと考えます。職種を問わず多様な領域で研究の志を持った皆様方におきまして、意見交流の場になりましたら主催する者として望外の喜びです。最後になりますが、本大会が会員皆様にとりましてより実り多く、思い出に残るものとなりますよう、ぜひとも積極的なご参加とご支援を賜りたくお願い申し上げます。

2022年(令和4年)4月吉日

第59回日本臨床生理学会総会
会長 吉岡 公一郎